「先月29日に相談」世田谷で首切られ死亡の女性　逃走男は羽田空港で身柄確保

世田谷区・野沢で起きた女性殺害事件は、単なる突発的な凶行ではなく、事前に「防げた可能性」があったという点で多くの人に強い衝撃を与えています。被害者の女性は韓国籍の40歳で、交際していた男から首を切りつけられ、その後亡くなりました。報道によれば、女性は事件の数日前、警視庁に「別れ話をしたら暴力を振るわれた」と相談していたといいます。しかし、被害届は提出されず、警視庁は男に「注意」をするだけで終わっていたというのです。

この経緯を知ると、誰もが「もっと強い対応はできなかったのか」と感じざるを得ません。もちろん、被害届が出なければ警察が介入できる範囲には限界があるという現実もあります。しかし結果的に、被害者は相談したわずか数日後に命を奪われました。これは「相談しても守られないのではないか」という不信感を社会に広げかねません。

交際関係や家庭内での暴力は、外から見えにくく、本人も「恥ずかしい」「大事にしたくない」と考えて届け出をためらうことが少なくありません。その心理的ハードルを理解したうえで、行政や警察がどのように「実効性ある支援」を行うのかが問われています。被害届が出ていない段階でも、危険度を慎重に見極める仕組みや、民間シェルターや弁護士などと連携したサポート体制が不可欠だと痛感します。

さらに今回、逃走していた男は羽田空港で確保されました。これは海外に逃げようとしていた可能性も示唆され、計画性や逃亡意思の強さを物語っています。つまり「一時的な激情」ではなく、深刻な殺意を持っていたと考えられる点も、事件の重大性を際立たせています。

被害者が生前に「別れたい」という意思を示したにもかかわらず、それを暴力で封じ込めようとした加害者の行為は、女性の人生と尊厳を徹底的に踏みにじったものです。同時に、社会として「個人の自由な選択を守る」ための仕組みがまだ不十分であることを露呈しました。

今回の事件は「誰にでも起こり得る身近な危険」として受け止める必要があります。恋人や配偶者との関係であっても、相手からの暴力や脅しは絶対に許されないし、早期に「危険のサイン」を周囲が察知し、行動できるかが命を守る分岐点になります。被害者の無念を思えば、この事件を一過性のニュースとして流すのではなく、社会全体で学び、制度を見直すきっかけにしなければなりません。

女性のご冥福を心から祈るとともに、同じ悲劇が繰り返されないよう、私たち自身も「相談を受けたら軽く見ない」「異変を感じたら声をかける」など、できる範囲の行動を考えていくことが求められていると感じます。