
『おおかみこどもの雨と雪』が再び地上波で放送され、多くの人が「懐かしい」と口にする一方で、改めて議論が再燃しているのが“児童相談所”の描かれ方です。
「児童相談所が悪役みたいに見えるのはおかしい」という声は公開当時からありました。けれども、私はこの描写を「対立の演出」ではなく、「社会と個人のすれ違い」として受け止めています。
花は、人間と狼の間に生まれた二人の子を必死に守ろうとする母親。現実的に見れば、検診を受けさせない、引っ越しを繰り返す、近所との関係も築けない――まさに“支援が必要な家庭”です。しかし、彼女の中では「子どもを守る=秘密を守る」ことであり、その必死さがかえって社会との断絶を深めてしまったのです。児童相談所の職員は敵ではなく、花が“追い詰められた母”として社会から距離を取ってしまった結果、そう見えてしまっただけ。監督はその「認識のズレ」を丁寧に描いたのだと思います。
細田守監督は取材で、母子家庭の現実に触れたと語っています。取材を重ねた上で、現実をそのまま描くのではなく、“ファンタジーを通してリアルを浮かび上がらせる”方法を選んだ。だからこそ、観る人によって感想が正反対になる。これは批判ではなく、彼の作品の特徴とも言えるでしょう。
また、『竜とそばかすの姫』でも児童相談所の制度描写が話題になりましたが、そこにも「現実を正確に描くことよりも、人の心がどう動くかを描きたい」という意志が透けて見えます。細田作品はいつも、現実的な“正しさ”よりも、登場人物の“心の真実”を優先しているのです。
ただ、それが時に誤解を生み、観る側の立場によって“理不尽”にも見えてしまう。だからこそ、10年以上経っても『おおかみこどもの雨と雪』は語られ続けています。母親の自己犠牲、児童相談所の介入、そして子どもたちの選択――この作品が提示するテーマは、どれも「正解のない現代日本の縮図」です。
花は最後、雨を山へ送り出しながら「元気で生きて」と言います。
それは“手放す勇気”でもあり、“母としての覚悟”でもある。
現実ではあり得ない選択かもしれませんが、誰もが一度は感じる「子どもを信じて送り出す痛み」を描いたからこそ、この作品は今なお心を揺さぶるのだと思います。
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<ツイッターの反応>
しでぼー
@fukuhara15夏休みには実家に帰る おおかみこどもの雨と雪 pic.x.com/zeWnyKc6S3
れんこんメリケンサック
@Renc_onじゃあ、私が おかえり って言ってあげるよ この言葉が花ちゃんなりの愛のかたちなんだろうなぁ #おおかみこどもの雨と雪 #果てしなきスカーレット公開記念金ローキャンペーン x.com/studio_chizu/s…
ま
@asamai922でも竜とそばかすの姫に比べたらおおかみこどもの雨と雪の方が凄腕ベテラン脚本家が共同協力しているので脚本と流れがおかしくない 奥寺さんいなくなってかなり変になった
朝日野
@asa_hino_mon17先に生まれたのが雪なのになんで順番が「雨と雪」なのかなーってかなり前から思ってたんだけど、TikTokで「おおかみこどもの雨と雪」じゃなくて「〝おおかみこどもの雨〟と雪」っていうコメント見つけて目から鱗落ちた































